犬について。
歩みを支えた鼻緒が切れかけていた。
まだ、夜を帰さない風が吹いて。
見慣れた帰路。
指を鳴らして構える桜に、平日の陽が座っていた。
尾を振って追い駆ける好意。遂行の日を、膝を揺すって待つ計画。
傷のない耳垂で計った体温。
意に介さない風貌で、憂鬱に煙吐いた夜。
それに、これ以上はないと言い切れる共犯者達。
溢れてしまいそうな今の暮らしが嫌いじゃない。
すれ違い続けた命運達は、器用にほつれたただの糸だった。
今更拾うこともしないし、片すこともしない。
吹かれて飛んだら、それまでだ。
絵空事のように綴る僕は何者なんだろうと。
洗剤を詰め替えるくらいの頻度で、思ったりする。
垂らし文句に灯がともって、破廉恥に夜が加速していく。
フールオンザビル。
「なんだか俺、すべてが嫌になって。この街から抜けだしたい」
上着だけ持って、酩酊した頭でキーを回しても。
免罪符ごと好きでいようと踏み込めなくなる。
誰も、井の中だ。
海を漠然としか知らないまま海を語る。
誰でもいいなら僕でいいし。
誰でもよくないからお前なんだよ。
性食眠衣食住、喜怒哀楽じゃ満たせない。
僕は、俺でいたい。
くそったれだよ。
遠吠え。
荒れた肌に、指に。
忙しく過ぎる暮らしが染みて。
痛覚にちょっかいを出すこの頃。
暮らしや、吸い込んだ酸素に蔓延る憂鬱と戦っていた期節は過ぎて。
眼前の敵は、仕事から来るそれらだ。
計画を立てて、好意を募らせて。
待ち望み、忍ぶ日々の所為で。
計画に支障が出てしまうような、本末転倒な事態。
割れたまま直せていない液晶。
伸びて、邪魔に思えてきた髪。
帰路に香る好意の色。
数え出したらキリが無いほどにある理由の所為で、いつかは終わってしまう暮らしに。
歳月が算されて、命数が減るなら。
やっぱり。
くそみたいな朝だ。
窓。
寒さや、酩酊や、好意に振り回されている間に。いつの間にか年が明けていた。
こんばんは。
中吉の酔っぱらいです。
一月の尾は遠く。
二月の瞬きに息を呑むこの頃。
今年は、楽しいことを沢山したいな。
今は、仕事が全体的に「おばか」過ぎてどうしようもなくて。
余裕が無くなって、自己嫌悪に浸るような。
平日を凌ぐような日々だけれど。
それでも、計画は沢山あるから。
僕の好きな人、好きな人達と。
遂行し続ける年でありたい。
「今年」で括るのも嫌だから、これから。ずっと。
やりたいことやって、やめたいことやめる。
その為に、辞めたいこともやり続けるよ。
そういえば。
Suicideという曲を、僕なりにカバーしました。
我慢出来ずにファズを踏みつけたり、幾人かのことを思いながら言葉を綴ったりしました。
映像は、親愛なるおばかな友人に撮ってもらいました。
棄ててしまうくらいなら、甘いもんでも食いに行こう。
アカイキセツの再来を待てなかった彼奴にも。
憂鬱と疾患に傷を増やしたあの娘にも。
本人に渡せない泡銭なんて。
もう、封をしたくない。
溜息の数に指を折ることも、平日を凌ぐ策を練ることも。
何も、つまらないじゃんか。
いつまでも、ドキドキしていたい。
色にも、夢にも。友達にも、計画にも。
好きな人と、好きな人達と。
楽しいことしようぜ。
blue。
疫病は、相も変わらずに悪戯を続けている。
やる気をなくして、実家に帰る日はいつになるのか。
同調圧力で隠した口元。
繊維の裏で、舌を出してみたりした。
年の瀬らしく今年を振り返れば。
寒さに顔を顰めるまで、ずっと一人だった。
憂鬱とか、やるせなさとか、後悔とか。
どうしようもないそれらと睨めっこをしながら。
千鳥足で履物を鳴らしていた。
頭痛が玄関を叩くくらいの頻度で、人と知り合ったり。「多分、もう会わないな」って思ったり。
そんなことを繰り返していたけれど。
朝も、夜も。一人だった。
逃げるように、好意のない体温に触れて。
誤魔化すように眠る僕に、嫌気が刺したりした。
頭の隅に「上着」が居座るようになってから。
きっと、その頃から「師」は準備運動を始めてた。
「師走」とは、誰がそう呼んだのか。
よく言ったもんだよね、本当に。
歳末に、好意が溢れて仕方がない。
もう、一人じゃない。
出会いの仲介も、再会の仲介も。
思い返せば同じ人だった。
煙草を辞めてしまった、癖毛の彼に。感謝と愛を。嫌がられる程送りたい。
相変わらず、可愛い奴だった。
相変わらず蹴られたし、相変わらず酔っていた。
身長は、もっと高くなっていた。
好きな人達や、好きな人に。
また会えたり、出会えたりした一年。
一年というより、冬と言うべきか。
思い出のほとんどが、冬で息をしていて。
そんな冬に、また思い出が増えた。
沢山の優しさに生かされていて。
少しのあざとさに躓いたりする。
「僕に振り回されてほしい」
なんて、小言で綴っておきながら。
僕が振り回されてばかりだ。
抱えて、溢れてしまいそうな好意。
零れてしまわないように、伝え続けていたい。
伝えられる距離を保てるように。
もう、離れてしまわないように。離してしまわないように。
僕は、僕の好きな人達のことが。
大好きです。
とても。好きです。
好きな人達の、好きな人も。
僕であったら幸せだな、と。
そんなことを思う夜。
小言を綴っていると。
たまに「くさいな」なんて笑ってしまいそうになることがある。
でも、僕は口下手だし。
言葉や、言葉を選ぶ時間が好きなので。許して欲しい。
好意や、約束を頼りに。これまで必死に生きてきて。
好意や、約束を頼りに。これからも生きていきたい。
その道中を、言葉や譜面で綴りたい。
僕は目が悪いから。
これからのことを考えると、不安に目を瞑りたくなるときもある。
だから。これからことは、約束と計画だけにして。
今は、今溢れたこの好意を。
抱えたまま歩いて、抱えたまま眠りたい。
来年は、きっと素敵な一年だ。
眠っている間に、雨が降っていたらしい。
濡れた路面が眩しくて、透明な空に上目を遣った。
硝子の欠片を蹴飛ばして、二回目の道を歩いていた。
後ろに延びた影は二つ。
その繋ぎ目に、優しさが眠っている気がした。
下か、鷹か、したたかか。
「戻れなくなるよ」
あの小説を読んだのは、いつのことだったか。
上質紙に綴られていた台詞が、今更になって頭の中で響いた。
齢を重ねれば重ねる程、「頭」というものは良くなるものだと思っていた。
どうやら、僕はそれにあてはまらないらしい。
隠す気のない落とし穴の淵に立って、千鳥足で飛び込もうとしている。
夜だからか、悪い視力の所為か。
はたまた、ただひたすらに深いのか。
何れにしろ底は見えなくて。
「飲み終えるまで」と、猶予の代わり。
喉を酒で撫でている。
僕は、優しくもないし。
頭も良くない。
果実酒に果実を入れるのが好きだったあの子は、別れ際も古川本舗を聴いていた。
「教えなきゃ良かった」なんて言ったら怒られるだろうけれど。
好意を蹴った仕返しか。
きっと。藁越しで鼓膜に釘を打たれている。
「したたかですね。」
デーモン閣下みたいな笑い声をする職場の先輩にそう話すと。
「じゃあ、お前は『脆弱』だな。」
なんてことを返された。
「それ、合ってます?」
「良いんだよ、それっぽければ。」
「じゃあ、僕は脆弱ですね。」
肺から溢れた煙が、雲のない師走に滲んだ。
師も走るとは良く言ったもので。
この暦を、僕は走り切れるだろうか。
それとも、落とし穴に落ちて。
いつまでも、師走の中で息をするのだろうか。
忙しさから来る錯覚なのかもしれないね。
思い出のほとんどが、この季節だ。
出来合いの海。
きっと、あれは水槽だ。
尾も止まった魚と睨めっこをしながら。
水槽の中で、溺れた振りをする。
「冷たいね」
昔の話。きっと、態度か性格を指して言われた言葉。
掌に覚えた、正反対の体温を思い返して。
「きっと、太陽でも食べていたのだろう」
そんなことを思った。
カフェ・ホリウッド/隙間。
いつか、あなたが。
猥雑な色恋に疲れたとき。
此処で、硝子を冷やして待っています。
相対した寒気。
曇り空に塩を撒いて、四股を踏み始めたこの頃。
相変わらず、指が痛い。
「指痛てぇ」と小言を綴ってから、一月程が経過した。当初に比べれば、大分良くなった方だけれど。
相変わらず、指が痛い。
痛みと同じように、相変わらずなことばかりだ。
先日、頭のおかしい酔っぱらいと酒を飲んだ。
フレンチトーストをアテに酒を飲むような人だった。
結果、四件も店を梯子して。千鳥足で八王子を歩いていた。
酔っぱらい同士が出会って、よく何事もなく一日を終えれたなぁと思う。
なんか、カラオケの壁殴ってたけど。
指、大丈夫かなぁ。
皆、知ってる?指って怪我するとマジ痛いよ。
気を付けてね。
「次は新宿で」
と、約束をした。
歳月の。その流れを、肌で感じる。
今年の臍を舐めて、愛撫を終えたこの頃。
腿に手をかける季節になって、ようやく。
ようやく、好きな人達に会え始めた。
爪先を愛でるまで。
駆け足で会いに行きたい。
だから、付き合ってね。
思い出を捲れば、その大半は寒い時期だった。
補正というものは、無意識の内に態度が大きくなるもので。
頬を刺すその寒さも、足の裏を湿らせる雪も。
落ち着きのない別称も。
それら全てが愛おしくなる。
そんな季節に。
これからも、捲るような思い出を増やしたい。
皮膚が擦れ、骨が顔を出す程。
沢山の約束をしてきた。
その大半が、未遂のまま。
果たされる日を、静かにずっと待っている。
些細なそれも、酩酊の付録のそれも。
舌を恥じた誘い文句も。またね、も。
どれも、大事な約束だ。
約束は、必ずだよ。
ずっと。寂しさと、もどかしさを抱えている。
使い捨てる情事で、一時でもそれを誤魔化せてしまうことに。吐き気を催してしまう。
彼奴には、いつ会えるかな。
もう、会えないか。
舌を恥じた、いつかの誘い文句。
文豪の姓を名乗っていた、貴女へ。
緩やかに生きていてくれれば、僕はそれで充分なのですが。
いつか、気紛れか疲労か。何かの末に。
酔っぱらいをぶん殴りたくなったら。
浅草で、ホッピーを飲みながら待っています。
もう、指を怪我したりなんかしない。
ギターが弾けなくなるし。
約束も、出来なくなる。
待ち合わせの途中。
針を飲むのは、もう嫌だよ。
ねぇ、楽しくないでしょ。
楽しいことしようぜ。
pain。または、腫れ。
指が折れた。
病院には行ってないんですけど、十中八九。
折れたか、割れたか。何かが起きてる。
「痛てぇ!ぶつけた!うわ!痣だ!」
みたいな、素人の痛みのそれとは違う。
これはもう玄人の域。
痛みと腫れ、抱えた熱さは疫病のそれ。
看護師さん、陽性ですか?
そうですか。じゃあ、ウーロンハイください。
言わずもがな、酩酊の最中に息している訳ですが。
酒を飲む度に痛みが増すんですよね。
どうしようかと思いながら、酒を飲み。
小言を綴っては、ロキソニンを服用している。
今日は「指痛い」ってことしか書かないので。
僕の、左手の人差し指になったつもりで呼んでください。
それが嫌なら、酒飲んで歯を磨いて寝てください。
おやすみなさい。
1トン近くの鉄骨が、僕の人差し指にキスしてきた。
緊張してたのか、初めてだったのか。
まぁまぁな勢いで。強引に。
いきなり舌を入れるなってあれほど言ったのにな。
一瞬、指の感覚が消えて。
それは直ぐに「熱い」という感覚に変わった。
慌てて、指が繋がっているかどうかを確認したところ。
関節からだらだらと血が流れているだけだったので一安心。
けれど、安堵もつかの間。
第二〜第三関節の間がめちゃくちゃ痛い。
マジで痛い。
痛みのレベルがある程度上にいくと、「マジで痛い」しか出てこないんですよね。
気付きました。
人間が扱える強調表現の内、その頂きに座るのは「マジ」です。
患部は、時間と共に痛みと腫れを増していく。
動くには動くけど、痛いし。
ほぼ曲がらないし、痛いし。
ギター弾けないし、マジで痛い。
「病院行けよ」
と、あらゆる人間に言われるんですけれど。
行きません。嫌いです、医者。
医者と詐欺師とピエール中野はマジで嫌いなんです。
総じて性格悪いだろ、彼奴ら。
医者に患部を弄くり回されるくらいなら。
僕は、この痛みとともに酒に溺れます。
過去に三度、肺に穴があいて。
治療という建前で医者に遊ばれたんですけど。
肺の場合は、「放っておいたらなんかやばそう、臓器だし」という本能的なあれに負けてしまって。
奥歯を噛み締めながら保険証を提出した訳ですが。
今回の場合は、かなり迷いどころなんですよね。
骨だし。
我慢してたらなんとかなりそうじゃないですか?
骨だし。
「とりあえず、カルシウムのサプリを急いで買ってきた」
と、テーブルの向こうに座る女子に話したら。
普段、あまり笑わない子なのにめちゃくちゃ笑ってた。
可愛かった。
マジで痛いです。