ひとり。
ずっと、昔を思い返している。
ようやく、長袖が頭を過ぎる気温になったり、ならなかったりしてきた。
夏も、太陽も。
もう少しだらけてもいいのではないか。
こんなに頑張らなくてもいいのに。
もしかしたら、既にだらけていて。
夏の契約期間内に仕事が終わらなくて、だらだらと仕事を続けているのかもしれない。
だとしたら、きちんと仕事をして欲しい。
早く引き継げ、秋に。
ついでに、今年の昆虫は少なめにとも伝えておいてくれ。
虫は、嫌いだ。
人並みに情事にも耽るし、酒も飲むし、人付き合いもある。
仕事も順調だし。身体は痛いけれど、金には困らなくなった。
約束は果たせないまま、千鳥足で暮らしを継続している。
人混みを睨んだ眼に、誰一人として映っていないのは。
此処を歩いた貴方と、もう会えないからか。
そのことを、絶えず思っているからか。
ずっと、昔を思い返している。
昔の恋人の夢を見た。
情けない離別を噛んだ、十六の師走から。
今もまだ、好意を舌の裏に隠しては。
止まったままの計画が、遂行を諦めて煙草をふかしている。
酒瓶を割った思い出横丁に、揺れる酔った影は一つ。
泥酔した彼奴が、眠ったまま朝を迎えた場所では。
物乞い達が酒を酌み交わしている。
舌を恥じた誘い文句も。
その約束は果たされないまま。
また一つ、後悔が増えていく。
くそったれだと、煙を呑む夜に。
僕の好きな人達が、憂鬱と幸せを抱えて生きてくれればいいと思う。
会いたい人に、会える内に。
会えない人に、ならないように。
過ちで綴る歌詞、馬鹿ばっかりだと吐き捨てる日に。ただ、惰性で白くなる息。
今日も、また。
抱えたまま眠る、後悔や意地。