まじないとまばら。
「嫌な夢ばかりみる」
数日前にそう綴った。
嫌な夢というものは、目が覚めても頭に残ってしまうもので。
起き抜けに煙草を吸いながら、夢をなぞり返すことが日課になってきている。
以前、友人が夢日記なるものを書いていた。
それを聞いた別の友人が「夢を日記につけたり、思い出そうとするのは良くない」なんてことを言っていた。
夢と現実の区別がつかなくなるとかなんとか。
「オカルトの類だ」なんて一蹴していた僕だったが、今になって少し気にしている。
でも、思い出してしまうものは仕方がない。
どうしようもないと、また夢を思い出している。
中学生の頃に住んでいた町。
知らない女性と、銀杏並木を歩いていた。
銀杏並木を歩く少し前。
PCの買い替えに伴って、既存の中身を整理していた。
懐かしいデータが沢山出てきた。
数少ない、僕が制服を着ている写真も出てきた。
高校一年の夏休み明け。
退学届けを出した帰り、二限が始まる音を背にTOMOVSKYを聴いていたことを思い出した。
更にデータを遡っていると、昔の恋人の写真が出てきた。
肺や心臓の辺りから、矛先のない鬱屈が溢れてきて。
左手のグラスを壁に投げつけたくなったが、酔いきれていない理性がそれをなだめた。
電気を待っている管球が僕を俯瞰している気がして、気持ち悪くなった。
机の端。
いつからか触らなくなったルービックキューブ。
六面をまばらな色に染めて、そこに座っている。
いつだったか、友人に習った手順をなぞりながら。
夢と暮らしと色を整理していく。
六面を整えて。
色をまばらにしてから、机の端にそれを戻した。